アコンカグア登山記録 中道宏
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1月7日 晴  念願のアコンカグアに登頂

1:30に眼が覚めたら、眠りにくくなった。
2:30起床SSさんも起きている。まず、ホカロンを靴の中に入れる。
クラッカーと冷たいお茶の朝食。
2:47   標高5,495m 気圧506hPa  気圧が上がっている。好条件。
4:00出発。SSさんは30分後に出発とのこと。私のことを決して気にしないで追い抜いて登るよう、昨日話しておいた。

予想したとおり、すぐの岩場に雪が無く、ルートが分からない。昨日踏査済の彼が来るのを30分、更に30分待つ(彼は出発後2度テントに戻り、5:30の出発となったそうだ。)もみえないので、真東にライトと磁石を頼りに進み、やっとルートを見つけたが、相当に体力を消耗した。(日本人親子も同日登頂したが、帰途ここで道を失い、ビヴァークしている。)

5:40西面から東面への尾根すじ。
強風のなかしばらくラッセルを続けると、3張のテントから3人が出てきて、私のトレースに続いている。有難い。強力な援軍だと思ったところ、どうもラッセル泥棒を決め込んでいるようで近づいて来ない。

8:30 Independencia小屋跡。昨年はここまで。
8:50東面から西面への尾根すじ、恐れていた強風はない。
ここから誠に快調。
誰かに後から推されているように感じた。この昂揚感は一生忘れないかもしれない。
Gran Travesiaもアイゼン無しで通過。
Gran Canaletaの入口近くで、キックステップに疲れ、アイゼンをつける。
Gran Canaletaはさすがに長い。また昨日の降りのステップを登りのステップに踏み代えねばならない。しかし、雪があったことは幸である。
Canaletaの入口、中ほど、頂部は35°くらいの急傾斜で、時にはザイルも必要と聴いていたが、春山の北穂高の雪渓よりは楽ではないか。

南峰・北峰の分岐のところで休止。初めてカメラを出す。後ろは相当に遅れている。

Gran Canaletaを上りつめ、
南峰と北峰の鞍部直下で休み、
カメラを出し、下方を撮る。

次は頂上である。ルートも平坦になり、雪も少ない。安心感からかここで大失敗の原因を作ってしまった。栄養補給のヨーグルト・レーズンを仕舞い忘れ、悪いくせの面倒くさがりでザックを入れないで、手に持ったまま歩き出した。
頂上直下5m、距離15mくらいのところで手を使う必要があるとみて、歩きながらレーズンをポケットに入れるため、ストックを2本左手に持ち替えたところ、転倒して後ろに転び、頭を数箇所打った。努めてゆっくり起き上がる。少しふらつく。ここまできて初歩的な大失敗を犯すとはまことに恥ずかしい限りである。

12:00頂上   標高6,505m 気圧441hPa
厳しい教訓を受けての頂上であったが、誰とも顔を会わせずに来れた、また誰もいない私だけの頂上である。このような僥倖を享受してよいのだろうか。

頂上から南峰と南壁をみる。
長谷川恒男が初めて冬期に単独登頂した。すごいの一言。

南壁のすごさに圧倒される。次にPolish Glacier(ポーランド氷河)を覗こうと思ったが、少しふらつくこと、誰も見てくれていないことから、残念だが諦める。四方を見渡す。山しか見えない。太平洋が見えるかと思ったが、そんなに小さな山脈ではないのだ。頂上は思ったより広い。何枚か写真を撮ると、下山を心配しはじめた。まだふらつくので特に慎重を期し、ゆっくり降りることとする。

上部から下部をみる。
この雪で楽をした。

下山時に擦れ違うSSさんに転倒の様子を話し、ゆっくり降りるので私に追いついたら、監視してくれるようお願いする。

Gran Canaletaの入口から
Gran Travesiaをみる。
Gran Canaletaの入口から
Gran Travesiaをみる。
西面(左)と東面を分ける尾根。

Gran Travesiaで彼が追いつき、無事東面に出た。ここで彼に先行を促したが、心配してずっと同行してくれた。ありがたいことである。水不十分、食糧不十分、寝不足で、ここからの下りは本当につらかった。

Independencia小屋跡(6,250)へ
東面を降りる。

5:30 Berlin
B.C.まで一気に下だる(その方が高度障害も心配ない。)つもりだったが、体力消耗からC2泊とする。予定どおり下だるSSさんにガスを使わしてもらい、取りあえずのスープを作り、また水もいただき、合わせて0.8Lの水が確保された。

テント内が温まってきたところで、ストーブに挑戦するが、全く働かない。最後にタンクを替えてみたら働いた。十分に飲みだめ、食いだめしほっとしたが、近くのテントの日本人親子が帰ってこない。父親とはGran Travesiaですれ違ったので、相当遅れると思うが心配でならない。

18:33   標高5,650m 気圧495hPa  気圧が下がっている。

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