中央道やヴィーナスラインから見る八ヶ岳の裾野は広い。かっては富士山より高かったという伝説が生まれるだけのことはある。しかし、主峰赤岳(2,899メートル)も3,000メートルに届かない。連峰内に深い渓谷もなく、飛騨、木曽、赤石の、各山脈のようにアルプスの名称も与えられていない。 それでも広い裾野のうえにすっきりと聳える山客は、四方から望まれ、数字より高く見える。特に中央道の135キロポスト付近から観る赤岳や蓼科からの阿弥陀岳はアルパイン的である。
八ヶ岳は日本でも最も登山者が多いようである。何が人を魅惑するのだろうか。 各登山口まで林道が延びているのでアプローチが短く、自家用車やタクシーを利用すれば、その日のうちに頂上を踏み、下山することができる。また小屋ヶ岳と揶揄されるくらい山小屋が多い。私はほとんど利用しないが、各小屋もそれぞれ特色を出し、顧客をつかんでいると聞く。 さらに天候が良い。山で雨や雪に遭うのはできれば避けたい。週末を利用するような限られた日程の場合は特にである。このように登山者に便利な山はあまりないのではないだろうか。 八ヶ岳の良いところはそれぞれの好みや実力に応じ、いろいろな山行が選択できることであろう。岩稜の南八ヶ岳、森・湖・高原の北八ヶ岳と大別されているが、いずれも高山植物が美しく、四季により変化し、入門、初級、中級の各レベルの登山者を満足させてくれるありがたい山である。 なお、百名山には赤岳と蓼科山(2,530メートル)が入っている。