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2. Himalayan Experienceのチョー・オユー登山国際公募隊

(1)Himalayan Experienceとアースデスク,Active Mountain

ア.

Himalayan Experience(http://www.himex.com/、以下,HEという。)のRasselle Brice氏(以下,B氏という。)は1991年からチョー・オユーの、また1994年からエヴェレストの商業登山を実施しており、今回はB氏にとって46回目になる。これに日本から、倉岡裕之氏(http://www.hiro-kuraoka.com/ 以下、K氏という。)とスイスチェルマットActive Mountain(http://www.active-mountain.com、以下AMという。)の田村真司氏(以下、T氏という。)が日本人の顧客を連れ、合流している。

イ.

フランスのシャモニー在住のニュージランド人であるB氏は、私が超人と思うEDのK氏が超人と評する登山家である。
HEとB氏は長年の努力と実績から、隊の組織化、装備の開発、ルートの開発、高度順化のプログラムの開発、天気予報の整備を行い、その結果安全性が高くなり、参加費も安価となっている。

ウ.

国際公募隊への参加は、隊が用意するプログラムに柔軟に乗れることが肝心であり、そのためには、体力、技術力に加え、自己管理、協調性、社会性等が求められる。
またこの隊に参加して登頂したことは、「自力で登頂した」のではなく、「登頂させるプログラムに参加し、プログラムに従って登頂した」ことと理解している。
なお、B氏,K氏,T氏ともにプログラムの適応に当たっては柔軟であり、例えば高度順化の方法もヨーロッパ人と日本人は異なり、日本人でも個々に異なっていた。

エ.

参加者は、HEに直接申し込んだヨーロッパ人とK氏,T氏に申し込んだ日本人の2グループからなる。後者は素人の私を除きヴェテランと新進気鋭で、K氏,T氏のもとチームワークも良い。

(2)Himalayan Experienceの対応

ア. 説明責任

Kathmanduでの初会合以来、事あるごとに日本人食堂テントを訪ね、無線機や酸素吸入器の取り扱いから、最終段階における天候判断、コースの決定まで丁寧に説明していたのには感心させられた。

イ. 移動

隊員は Kathmandu→Kodari→Tingri→BC(Base Camp)→ABC(Advanced BC)の途中へバス、ランクルで移動し、移動中の通関、宿泊、レストラン等もすべて手配されていた。またリタイア者の下山に丁寧に対応していた。なお、荷は個人毎に樽に入れ,BCまでトラックで、またABCまでヤクで運ばれる。ABC撤収にヤク170頭使ったとのことである。

ウ. BC、ABCでの快適な生活

到着前に共同のキッチン、食堂、シャワー、トイレと個人用のテントが設営済みである。食堂にはテーブル、椅子が置かれ、お湯の入った魔法ビン、各種紅茶、嗜好品、チーズ等が用意されている。トイレでは大の持ち帰り用のビニール袋がセットされた樽が上手く置かれており、シャワー、洗濯用のお湯も直ぐに用意してくれる。なお、共同の施設は太陽電池を電源とする蛍光灯で照明されている。
個人用テントには前後に出口があり、中央にマットとシートが重ねられており、その両脇に持参のエアーマット、ウレタンマットを敷き、個人装備を並べた。
食事は日本人には3人のキッチンスタッフにより野菜をふんだんに使った見事な日本食が供され、食べ過ぎないように注意しなければならないほどであった。
また朝食1時間前にはオシボリと紅茶(ミルクテーも選べる)が各テントまで届けられる贅沢も味わった。

エ. 訓練

ユマール登行、懸垂の訓練がBCの岩場とABCの氷上でそれぞれK氏,T氏により行われた。

オ. 無線機、酸素吸入器の提供

BCで各自に配布された。酸素ボンベはガイド、シェルパにより細かく検討され、しかるべき場所に荷揚げされていた。

カ. C1、C2、C3の設営

シェルパにより予め2人に1張りのテントが設営され、それぞれにマット・シート・寝袋・コンロ・食器が置かれ、シェルパ、隊員が交互に利用する。個人装備は倉庫テントに収納し、食糧は好みのもの(インスタントの米、スープ、ふりかけなど)をABCから持参する。

キ. ルートの開拓

HEは他隊に呼びかけ、ルートの開拓、フィックスロープの設置を行うが、応じたのは7隊だけであったとのことである。これら8隊以外を含め約600人(シェルパを含む。)が当たり前のようにこの利益を享受する奇妙な現象である。

ク. 登頂日の設定

B氏は高額の費用で天気情報を入手し(これを共有しようとする者もいない)、これに長年の経験を加味して登頂日を判断する。登頂に往復5日を要するので、アコンカグアやデナリのように好天を待って1日で往復するのとは大きく異なる。判断する材料を持たない隊はHE隊の計画を内々探り、自隊の計画を立てざるを得ない。この結果、各隊の登頂日が集中し、フィックスロープで渋滞が発生することになる。