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8. 登頂中止・撤退 (9月26日記)

(1)天候待ち

9月19日、2度目の高度順化を順調に終え、ABCに戻った。これから3日の休養の後天候をみて往復5日間の登頂に出発することになっていた。しかし20日から小雪が続き,C2以高に雪崩が発生し,C2→C3のルート工作,C3の設営が進められない。特に出発予定の23日以降はABCにも積雪が続き,上部の降雪、雪崩が十分に予測できた。

(2)B氏による登頂計画の検討

ア. 9月23日案

1. 29、30、1日は十分でないが、行動できる。
2. ギリギリのところで
29日 30日 1日 2日 3日
C1 C2 C3 登頂後C2 ABC
3. 29日に出発できず、しかしその後天候の回復の見込みがある時には28日に日程延長について隊員の意見を聞く。

イ. 9月24日案

1. 29、30、1日日は期待できる。ただし風があり、寒い。
2. 2班に分け、26と27日に出発する。
3. ロックバンドのフイックスロープで1時間は渋滞するので、これを避け,C3をロックバンドの左下に設け、フィックスロープを使わないで、登頂する。1時間余分に歩くことになるが渋滞で待つより良い。このコースはかって使ったことがある。
4. この作戦は内部限りとする。

ウ. 9月25日案

1. 夕方まで雪崩が続く。
2. 2〜3日は動けない。シェルパも動かない。

エ. 9月26日案

1. 共同する8隊で協議した。
2. 情勢は
昨日中国隊のシェルパがC1まで行った。胸まで雪があり、通常の3倍時間がかかった。C1のテントはほとんど雪に埋まっている。
29、30、1日に間に合うようにC2→C3のルート工作、C3の設営を行うことは難しい。
日程を延長しても成功の可能性はない。
3. 登頂を中止する。
I am sorry。しかし天候をコントロールできない。
安全第一。今までの自分の経験では行かない方が良い。
時間と金を使ったが、山とはこういうものだ。
無念さは自分も経験済み。皆さんの気持ちも分かる。自分やシェルパの経験を重視し、諦めて欲しい。
4. 撤退する。
27、28日にC1、C2の装備を下ろす。余力のある若い人は応援を頼む。
フィックスロープを回収する。8隊以外がこれを使い、登頂を試み、事故を起こせば、救助を手伝わないといけなくなる。
5. 今後の予定
30日 1日 2日 3日
ヤク到着 BCへ Zhangmuへ Kathmanduへ

(3)私の立場

ア.

私に決定権はない。従うのみ。

イ.

しかし私もツイていない。敗退記録をまた更新。

ウ.

最後まで気を抜かず、上げた装備はシェルパに任せず、自分で下げに行く。

エ.

明朝日本に連絡する。


※後注 HEのシシャパンマ隊は同時期にC2を雪崩に流され、C1は雪に埋まり、撤退したとのことである。

登頂中止・撤退が決定された日、チョー・オユーは夕日に輝いた。