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5. 高度順化と酸素吸入

※(1)、(2)は私の聞きかじりである。

(1)高度順化の基本

ア.

高度障害は

1. 高度とともに空気が薄くなり、酸素摂取量が少なくなることに加え、
2. 負荷により酸素を過度に消耗すること

により生じる。

イ.

順化は体の問題でなく、脳の問題である。体に負荷をかけすぎると、血液が体に回り、脳に負担をかけることになる。

ウ.

1のために

・ 高度をゆっくり上げる、
・ 登山時に呼吸する、
・ 下山時に呼吸する、
・ 作業時に呼吸する、
・ 酸素を吸入する。

エ.

2のために

負荷をかけないで車やロープウエイで登る、
早く歩かない、重いものを持たない、
高所に到達した際には直ぐ動かず、眠らず、首を立ててじっとしている、食事をすぐには摂らない、
ABC→C1→ABCの日帰りよりABC→C1(泊)→ABCが負荷が軽く、順化に適している。

(2)隊の考え方

ア.

高度順化は目標とする山、日程、テントの設営等により個々に異なる。特にガイドは登頂日を前提に順化を計画する。

イ.

ガイドの指導に従えば必ず順化する。ガイドは隊員の順化の程度を見て、的確に日程等を判断する。

ウ.

頑張らない(昨年のデナリとは違う)、競わない、何かあったら直ぐ相談する。

(3)過去の高度順化との比較

ア.

経験はアコンカグア(EL6962m)とデナリ(EL5200mまで)だけである。出発直前に、訓練のため自宅を車で出て富士山に登ったら,EL3400m付近で軽い高山病に罹った。

イ.

今回の計画をアコンカグアと比較すれば、何とかABCまではもちそうである(表3)。

表3 これまでの順化との比較

今回(A)

2002 アコンカグア(B)

楽な方
経過
日数
移動 負荷 経過
日数
移動 負荷  
1

Kodari
1700

Nyalam
3750
2

コンフランシア
3300

コロンビア小屋跡
3900

A
3
Nyalam
3750

Tingri
4200

3

コロンビア小屋跡
3900

BC
4300
A
5

Tingri
4200

BC
4900

5

BC
4300

ニード・デ・コンドル
5200
A
9

BC
4900

ABC
5700
8

ニード・デ・コンドル
5200

ベルリン
5850
A
14

ABC
5700

C1
6400
19

ベルリン
5850


6962
B

※1. ABCまでは経験済で大丈夫。ただし、(B)は4年若く、ダイアモックス服用
※2. ABC以高は初経験

(4)今回の高度順化の実績 1

ア.

ABCに入るまでに3度トレッキングがあった。数値はPsO2値。

Nyalam(8月31日)

EL3750 81→ 78 78 81(深呼吸後90) EL4050
  83← 75      

Tingri(9月2日)

EL4342 85→ 81 82 85(深呼吸後87) EL4620
  81← 80      

BC(9月4日)

EL4855 80→ 77(深呼吸後81) 79(深呼吸後86) EL5225
  77(深呼吸後85)←      

イ.

いろいろ試みたが、次のような感じを得、その後そのように実行した。

1. まずは通常どおり行動。
2. 余裕があるときは深呼吸、休憩の時にはまず深呼吸。
3. 下りは意識して呼吸。
4. きつい踏み出しの前には意識して呼吸、踏み出し後も呼吸。
5. 呼吸はこれまでと異なり,吐気でなく吸気。

(5)今回の高度順化の実績 2

ア.

K氏、T氏が持参されたパルスオキシメーターで測定したPsO2値を表4に示す。

イ.

要約すると

1. 標高が高くなるにつれ、緩やかに低下する。
2. 高所到達日の夕方より翌朝が低い。
3. 2度目の到達日は夕方、朝方とも1度目のそれより高くなる。
9月12日夕 70 9月13日朝 68
9月17日夕 72 9月18日朝 70
4. 順化6後のABCでの数値は安定的に順化していることを示している。

表4 高度順化の実績

    行程

最高
標高

宿泊
標高

PsO2 高山病症状

ダイア
モックス
服用

夜間
の尿

回数

量(L)

8

29

→Kodari

1685 1685            
  30

→Nyalam

3750 3750   85        
  31

順化1

4050 3750 81 83        
9 1

→Tingri

5050 4342 81 83

悪夢で3度目覚める

     
  2

順化2

4620 4342 81 83      
  3

→BC

4855 4855 80 81     4 1.3
  4

順化3

5255 4855 71 78     3 1.2
  5 訓練 5050 4855 78 80     2 0.7
  6 4855 4855 80 78

シートたたみの手伝いでクラクラ

  3 0.7
  7

→ABC

5745 5745 84 78

夜中にチェインストローム

  2 0.8
  8   5745 73 77   4 1.5
  9

順化4

5954 5745 82 78   3 1.2
  10

(フジャフジャ)

  5745 77 78     5 1.5
  11 訓練   5745 77 77

胸に違和感

  5 1.8
  12

→C1(順化5

6400 6400 70

到着後慌てて写真を撮り、フラフラ

  3 0.4
  13

→ABC

  5745 68 76

前夜就寝直後チェインストローム

1 3 1.4
  14   5745 79 80   1 2 1.4
  15

ナンパラ峠

5741 5745 79 78   1 2 0.7
  16   5745 79 76   1 3 1.4
  17

→C1

6400 5745 79 72   1 2 0.8
  18 ⇔アイスフォール上の
順化6
6700 5745 70 70

前夜から手足のシビレ

0.5
  19

→ABC

  5745 71   0.5 1 0.5
  20   5745 80 80   0.5 4 1.0
  21   80 84   0.5 3 0.8
  22   80 79

就床10時前からチェーンストローム、11時再発

0.5 2 0.5
  23   79   1.0 2 0.5
  24   81   1.0 2 0.5
  25   82   0.5 4 1.7

(6)酸素吸入

ア.

酸素吸入器の使用訓練が9月21日B氏により行われた。
要領は

1. タンクを立てる。
2. タンクのフタをはずす。このときフタを汚さない、失くさないよう注意する。
3. レギュレーターの目盛りを0.5に合わせる。
4. レギュレーターをゆっくり止まるまで回す。
5. タンクを横にし、タンクを回し、しっかり閉める。
このとき
酸素が漏れる音がしても驚かない、
レギュレーターの目盛盤は時々爆発することがあるので、決して人に向けない。
6. タンクを立てる。
7. マスクを着ける。
8. マスクの末端を押し回しでレギュレーターに繋ぐ。
9. 酸素が出ているかどうかインデケーターで確かめる。

イ.

訓練時PsO2値を測定すると、酸素使用前80が使用後に98に上がり、効果抜群である。

ウ.

利用計画はC2から使い始め、睡眠時0.5、行動時1.0、傾斜によりガイド、シェルパが調整する。

酸素吸入器